ウェブにも広がりを見せる VR の世界

その可能性と難しさ

自己紹介

杉本 雅広(すぎもと まさひろ)

WebGL に関するサイトやスクールの運営などをしています。ウェブ上では doxas の名前で活動。半分フリーランス。

今日のおはなし

今回は ウェブにも広がりを見せる VR ということで、様々なところで話題になっている VR について、簡単に説明も交えつつお話しできたらと思っています。

私自身はエンジニアですが、それほど VR やその開発について詳しくない方も多いと思いますので、あまり開発や技術の突っ込んだ話は今回はしないつもりです。

今日のおはなし

できるだけ、気持ちを楽にして、聞いていただければと思います。

事例紹介などもしながら、VR について、まずは知ってもらうことから、スタートしていきましょう。

感嘆の声とか漏れてくると嬉しいのでどんどん漏らしてください

VR(Virtual Reality)

さて、VR とはなにか、みたいなところはこのセミナーのなかで徐々に明らかになっていくと思いますが、まずは簡単に触れておきます。

VR は Virtual Reality の頭文字を取った略語ですね。仮想現実、とも呼ばれます。

最近では、様々なところでこの VR の話題を見聞きするようになりました。

VR(Virtual Reality)

VR ブームと言っても差し支えないほど、VR 熱は加速しています。その口火を切った Oculus Rift は有名ですね。

VR(Virtual Reality)

この中にも、Oculus 社の製品を体験したことがあるという人は多いかもしれません。

しかし、VR そのものは最近突然できた概念というわけではなくて、ずっとむかしから研究されてきたものです。

日本では平成8年にVR学会が設立されてますね

VR(Virtual Reality)

昨今話題の VR は、ヘッドマウントディスプレイと呼ばれる、ゴーグル型の機器を利用したものが多くなっています。ディスプレイを内蔵したゴーグルとヘッドホンなどを装着して、視覚や聴覚を中心とした五感に働きかけます。

人間はそれが本当の現実ではないと理解しつつも、まるで目の前に存在するかのように感じてしまう、というわけですね。

現実感の大切さ

VR そのものはそれなりに歴史を持っていますが、Oculus Rift がこれほどの大きなブームを巻き起こしたのは最近のことです。その秘密は、いったいどこにあるのでしょうか。

これにはいろいろな見方、考え方があると思います。

個人的にですが、私はその圧倒的な「本物感」にあったのではないかなと思います。

現実感の大切さ

この手の「なぜ VR はこれほど話題なのか」については、それこそ、今はそこかしこで語られたり論じられたりしているかと思いますので、ここではあくまでも個人的な、ひとりのユーザーとしての感想を言っています。

私自身が、初めて Oculus Rift DK2 を体感したときに感じたのは やべえこれほんとにそこにあるみたいだ! でした。

現実感の大切さ

難しいことを言い出せば切りがないでしょうが、大切なことって、その 本当にそこにあるみたいに見えた という、理屈じゃない感覚なんだと思います。

言葉で説明できなくても、五感が、感じている。そこに本当になにかが存在するかのように感じている、ということが、私にとっては驚きでした。

現実感のメリットとデメリット

この「まるで現実」という VR の特徴は、非常にエキサイティングな驚きの体験を私たちに提供してくれます。

しかし逆に、現実のようであるがゆえの、難しい問題も VR にはありますね。

現実感のメリットとデメリット

代表的なところでは、やはり身体的な負担が一番でしょう。

VR 酔い、と呼ばれる気持ち悪くなったりしてしまう現象をはじめ、眼球が不自然な位置で固定化してしまう斜視などの症状が出る可能性があることも知られています。

現実感のメリットとデメリット

現実的であるからこその素晴らしい体験と、それゆえの、身体的な負担や損害があるわけですね。

このような VR を利用する上で注意すべきポイントは、最近ではかなり情報がたくさん発信されています。もし、VR コンテンツを製作することがあるのなら、これらのことには十分に留意し、しっかりと調査しつつプロジェクトを進めていく必要があると思います。

ここまでのまとめ

  • VR には圧倒的な現実感がある
  • それによっていままでにない驚きや興奮が得られる
  • ただし反面デメリットも現実的なレベルに

様々な VR の活用

さて、圧倒的な現実感が多くの人を引きつけてやまない VR ですが、現在はどのように利用・活用されているのでしょうか。

パッと誰もが思いつくのは、まず「ゲーム」などのエンターテイメント性の高いジャンルだと思います。

様々な VR の活用

VR ゲームは本当に雨後の筍のような感じでどんどん出てきていて、とてもじゃないですが全部を追いかけるのは難しいレベルになっています。

世界最大のゲーム配信プラットフォームである Steam では、毎週毎週、数本の VR ゲームがリリースされています。ほんとに、すごいです。

様々な VR の活用

Steam での VR ゲーム

様々な VR の活用

その他、国内では PS4 に対応した PlayStation VR が既にアナウンスされているのは、みなさんもご存知だと思います。

やはり、今は VR というとゲームが一番ホットなジャンルということが言えそうです。

様々な VR の活用

PlayStation VR

様々な VR の活用

しかし、VR はゲーム以外のジャンルにも確実に広がりを見せていて、製作、医療、建築、教育などの分野での利用が研究されています。

個人的には、医療や介護といった、高齢化社会には切っても切れない分野での活用に注目しています。

お金のにおいがします……(笑)

様々な VR の活用

医療や介護における VR

参考:Three Companies Change Healthcare with Virtual Reality | NVIDIA Blog

様々な VR の活用

建築や不動産と VR

参考:Archilogic - 3D models and Virtual Reality

様々な VR の活用

教育と VR

参考:Google’s VR Field Trips Are Now Open to Everyone - VRScout

様々な VR の活用

と、こんな具合いに、本当に VR には様々な可能性があると思います。ここでは VR = ヘッドマウントディスプレイという感じで紹介してしまいましたが、必ずしもヘッドマウントディスプレイだけに限らず、モバイル端末を用いた VR 表現や、より専門的な機器を用いた VR 表現も、今後は利用される機会に合わせて様々なものが登場してくると思います。

楽しみですね。

VR on the Web

さて、ここまで VR そのものについていろいろとご紹介してきましたが、VR と Web はどのような繋がりを持っているのでしょうか。

途中、不動産ビューアをご紹介しましたが、あの例を見てもわかるように、ウェブ上で VR 表現を行ってしまおうという取り組みについても様々な事例が出てき始めています。

VR on the Web

これらの事例のほかにも、これから先の話になりますが、現在 WebVR というブラウザ向けの API の開発と実装が進められているなど、ウェブにおいても VR は今後大きな役割を担うことになりそうです。

現在はまだまだネイティブアプリケーションが VR を主導している状況ですが、数年後には、パワーバランスがどのようになっているのか、誰にも予測できないのではないでしょうか。

これから先の VR とウェブ

さてさて、様々な事例をご紹介してきましたが、最後に少しだけ、これから先のことを考えてみます。

VR は、特にウェブというフィールドにおいてはどのようなものになっていくのでしょう。

これから先の VR とウェブ

ウェブにおける VR に限りませんが、現在は VR はいろいろな面で高コストです。

機器の購入や、その実行環境の準備、事前に知っておかなければならない身体的負担への理解など、手軽に誰もが楽しめるものとは言えない現状です。

これから先の VR とウェブ

VR そのものが、これから様々に変化しながらこの高コストを解消していくことになると思います。

たとえば、機器がすごく安くなって誰にとっても入手しやすいものになったり、より小型化して、身体的な負担が軽減されたりしていくのだと思います。

これから先の VR とウェブ

そして、誰にとっても VR が身近なものになろうとするとき、やはりウェブの存在は無視することはできないと思います。

開かれたオープンなウェブというフィールドのなかで、制作する側も、それを利用する側も、ウェブを通じてより簡単に VR を介して繋がることができるようになっていくはずです。

これから先の VR とウェブ

ただし、その頃にはもう、わざわざゴーグルを装着して VR を楽しむ……なんて概念は古臭いものになってしまっているのかもしれません。

よりシームレスに、わざわざ意識することなどなく、ウェブから自動的に収集されてきたパーソナライズされた情報が、VR で目の前に表示されるようになったりするのかもしれません。

広い視点でよりよいものを

今はまだ過渡期です。VR はこれから、様々にその姿を変えていくでしょう。

でもだからこそ、いまの形の VR で勝負できるのも、まあいまのうち(あと五年とか?)なのかなとは感じます。今回はかなり抽象的な話に終始してしまいましたが、今現在でも、ウェブで VR 表現を行う技術基盤は既にそろっています。あとは閃きと創意工夫です。

それ言っちゃったらなんのビジネスでもそうですけど!

広い視点でよりよいものを

今回のセミナー(私の講演だけでなく)をきっかけに、みなさんのなかでなにか閃くものがあることを願っています。

それがウェブに関連するものだとしたら、ちょっとうれしいです。

本日は以上です。

ありがとうございます!